2016 年 62 巻 3 号 p. 451-458
大学病院での診療科別の副作用発生頻度の検討を行った.輸血中および輸血後に発生した様々な徴候・症状について,日本輸血・細胞治療学会ヘモビジランス委員会により推奨された17項目の「輸血副作用の症状項目」に従い,データ収集を行った.解析対象とした17大学病院の2009年1月から4年間の輸血副作用の総件数は8,851件であり,バッグ当り0.72%の頻度であった.また,バッグ当りの副作用発生率(全診療科)は赤血球製剤(RBC)や新鮮凍結血漿(FFP)では0.59%,0.79%と1%未満であったのに対し,血小板製剤(PC)は3.16%と高頻度であった.RBCでは診療科別の副作用頻度に差を認めないが,FFPでは「血液透析を対象とする腎臓内科,腎センター」が4.12%,PCでは「血液内科」3.84%,「小児科」4.79%と高い発生率であった.診療科別の輸血患者数および輸血患者あたりの副作用発生率についても検討を行い,同様の傾向を認めた.輸血中および輸血後に発生した徴候・症状を簡便な報告方法により収集することにより,これまで明確でなかった輸血副作用のリスクを明らかにすることができた.