日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
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ISSN-L : 1881-3011
62 巻, 3 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
原著
  • 大久保 理恵, 永島 實, 稲葉 頌一
    2016 年 62 巻 3 号 p. 441-450
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー

    ヘモグロビン(Hb)低値で不採血となった献血希望者の鉄不足量を評価し,貧血の改善方法を検討した.本研究へ同意したHb低値者より6 ml採血し,フェリチン,TIBC,血清鉄,可溶性トランスフェリンレセプター(sTfR)を測定した.鉄不足の評価方法として,フェリチン値12 ng/ml未満をAIS,Log10(sTfR/フェリチン)>2.07をIDEとした.さらに400 ml献血可能Hb値までに必要な鉄量を計算した.なお,検査結果を本人に通知し,貧血程度の把握及び健康管理による貧血の改善を促した.フェリチン値正常者には現病歴,スポーツ歴等のアンケート調査も行ない,さらに58名にsTfRを除く3項目の検査を行った.4項目の検査を行った80名のうち,AIS67名IDE67名(重複66名)だった.58名も加え,対象者138名中AIS81%,不足鉄量200 mg以上28%,鉄欠乏と考えにくい者18%という結果が得られた.約8割がAISであり,鉄欠乏状態が高度であった.今後,鉄分摂取のより丁寧な指導と可能ならばフェリチン測定も必要と考えた.また200 mg以上の鉄が不足している者には医療機関受診を勧めることとした.一方スポーツ貧血も問題であることもわかった.

  • 藤井 康彦, 田中 朝志, 小高 千加子, 加藤 栄史, 米村 雄士, 藤島 直仁, 佐々木 さき子, 奈良崎 正俊, 大澤 俊也, 田崎 ...
    2016 年 62 巻 3 号 p. 451-458
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー

    大学病院での診療科別の副作用発生頻度の検討を行った.輸血中および輸血後に発生した様々な徴候・症状について,日本輸血・細胞治療学会ヘモビジランス委員会により推奨された17項目の「輸血副作用の症状項目」に従い,データ収集を行った.解析対象とした17大学病院の2009年1月から4年間の輸血副作用の総件数は8,851件であり,バッグ当り0.72%の頻度であった.また,バッグ当りの副作用発生率(全診療科)は赤血球製剤(RBC)や新鮮凍結血漿(FFP)では0.59%,0.79%と1%未満であったのに対し,血小板製剤(PC)は3.16%と高頻度であった.RBCでは診療科別の副作用頻度に差を認めないが,FFPでは「血液透析を対象とする腎臓内科,腎センター」が4.12%,PCでは「血液内科」3.84%,「小児科」4.79%と高い発生率であった.診療科別の輸血患者数および輸血患者あたりの副作用発生率についても検討を行い,同様の傾向を認めた.輸血中および輸血後に発生した徴候・症状を簡便な報告方法により収集することにより,これまで明確でなかった輸血副作用のリスクを明らかにすることができた.

短報
  • 石丸 文彦, 小島 牧子, 鈴木 雅治, 助川 徹, 難波 寛子, 松﨑 浩史, 中島 一格, 加藤 恒生
    2016 年 62 巻 3 号 p. 459-461
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー

    輸血によるHIV感染の防止に繋げることを目的に,2012年から2014年の3年間における東京都赤十字血液センターでのHIV陽性献血者の特徴を検討した.HIV陽性と判明した献血者は,2012年23名,2013年15名,2014年14名の計52名であった.初回献血者は12名で,献血経験者は40名であったが,そのうち献血回数10回未満が26名,10回以上は14名であった.HIV関連の質問に対する回答以外に,献血者の情報からHIV感染を疑わせる特徴は認められなかった.輸血によるHIV感染を防止するためには,ウインドウ期の安全性を高める問診票が重要であるが,その問診票を効果あるものとするためには,献血者がその重要性を理解し,HIV感染のリスクを自覚するなど,多方面にわたるアプローチが必要と考えられる.

活動報告
論文記事
  • 及川 伸治, 田口 剛, 遠藤 希美加, 星 尚宏, 川島 航, 堀部 泰人, 浦野 慎一, 鈴木 光, 峯岸 正好, 伊藤 孝, 清水 博
    2016 年 62 巻 3 号 p. 476-482
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー

    日本赤十字社血液センターは血小板製剤の有害反応を減らすために血小板の洗浄をしばしば求められるが,国内には臨床使用が承認された血小板保存液は無い.最近,我々は新規血小板保存液であるBRS-A(BRS supplemented with ACD-A)を開発した.BRS-Aは臨床で入手可能なビカネイト輸液(重炭酸リンゲル液,BRS)とACD-A液を用いて調製することができ,5%未満の血漿濃度で7日間血小板機能を維持することができる.本研究の目的は,ビカネイト輸液とは電解質濃度が異なる別のBRSであるビカーボン輸液を用いて調製したBRS-Aの性能を評価することである.

    2種のBRS-Aは,ビカネイト輸液またはビカーボン輸液500 mlにACD-A液25 mlを添加することにより調製した.ビカネイト由来またはビカーボン由来BRS-Aは,塩化マグネシウムを0.9 mmol/l,0.5 mmol/l,塩化ナトリウムを95.2 mmol/l,100.1 mmol/l,クエン酸三ナトリウムを4.2 mmol/l,5.1 mmol/l,及び重炭酸ナトリウムを26.6 mmol/l,23.8 mmol/lをそれぞれ含んでいる.他の電解質濃度は同様であった.アフェレーシス採血由来血小板をこれらのBRS-Aに,5%未満の血漿濃度で7日間保存し,その血小板機能を比較した.

    pHは,7日間保存中すべての血小板で7以上であった.平均血小板容積,低浸透圧ショック回復率,グルコース消費割合,乳酸産生割合,スワーリング,及びCD62P・CD42b発現率は両群間で同等であった.ビカーボン由来BRS-Aの重炭酸濃度はビカネイト由来BRS-Aよりも低かった.

    2種のBRS-Aにおけるマグネシウム,ナトリウム,クエン酸塩,及び重炭酸塩などの電解質濃度の違いは,7日間の保管中,血小板機能に影響を及ぼさないことが分かった.本研究の結果は,ビカーボン由来BRS-Aが実際に血小板保存液として使用できることを示している.従って,ビカネイト輸液ではなくビカーボン輸液を院内採用している医療機関においても,BRS-Aを調製し使用することができる.

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