日本赤十字社血液センターは血小板製剤の有害反応を減らすために血小板の洗浄をしばしば求められるが,国内には臨床使用が承認された血小板保存液は無い.最近,我々は新規血小板保存液であるBRS-A(BRS supplemented with ACD-A)を開発した.BRS-Aは臨床で入手可能なビカネイトⓇ輸液(重炭酸リンゲル液,BRS)とACD-A液を用いて調製することができ,5%未満の血漿濃度で7日間血小板機能を維持することができる.本研究の目的は,ビカネイトⓇ輸液とは電解質濃度が異なる別のBRSであるビカーボンⓇ輸液を用いて調製したBRS-Aの性能を評価することである.
2種のBRS-Aは,ビカネイトⓇ輸液またはビカーボンⓇ輸液500 mlにACD-A液25 mlを添加することにより調製した.ビカネイト由来またはビカーボン由来BRS-Aは,塩化マグネシウムを0.9 mmol/l,0.5 mmol/l,塩化ナトリウムを95.2 mmol/l,100.1 mmol/l,クエン酸三ナトリウムを4.2 mmol/l,5.1 mmol/l,及び重炭酸ナトリウムを26.6 mmol/l,23.8 mmol/lをそれぞれ含んでいる.他の電解質濃度は同様であった.アフェレーシス採血由来血小板をこれらのBRS-Aに,5%未満の血漿濃度で7日間保存し,その血小板機能を比較した.
pHは,7日間保存中すべての血小板で7以上であった.平均血小板容積,低浸透圧ショック回復率,グルコース消費割合,乳酸産生割合,スワーリング,及びCD62P・CD42b発現率は両群間で同等であった.ビカーボン由来BRS-Aの重炭酸濃度はビカネイト由来BRS-Aよりも低かった.
2種のBRS-Aにおけるマグネシウム,ナトリウム,クエン酸塩,及び重炭酸塩などの電解質濃度の違いは,7日間の保管中,血小板機能に影響を及ぼさないことが分かった.本研究の結果は,ビカーボン由来BRS-Aが実際に血小板保存液として使用できることを示している.従って,ビカネイトⓇ輸液ではなくビカーボンⓇ輸液を院内採用している医療機関においても,BRS-Aを調製し使用することができる.
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