日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
抗Jkaを保有する重症感染症患者へのJka不適合赤血球を含有する顆粒球輸血
髙野 希美川畑 絹代安田 広康大原 喜裕藁谷 朋子佐野 秀樹菊田 敦大戸 斉
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2016 年 62 巻 5 号 p. 610-614

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抄録

再生不良性貧血治療中に重症感染症を併発し,保有する抗Jkaと不適合である赤血球を含む顆粒球を輸血したが,溶血反応が観察されなかった10歳代女児症例を経験した.患者は抗Jka(力価1倍)を保有していたが,免疫抑制療法中に敗血症と多臓器不全に陥ったため,やむを得ず不適合赤血球を含む同種顆粒球輸血を実施した.ドナーとして選定された近親者は,輸血前のドナー検査によりJk(a+b-)でJka不適合であることが判明した.しかし,患者の容態が急速に悪化し,時間的猶予がなく,ABO型一致,適合率約30%であるJk(a-)ドナーを探し出すことが出来なかったため,Jk(a+)赤血球(計160ml)を含む顆粒球輸血を施行した.顆粒球輸血後,直接抗グロブリン試験は陽転せず,抗Jkaも上昇しなかった.患者の生化学検査および輸血関連検査から,不適合Jk(a+)赤血球の溶血は観察されなかった.

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© 2016 日本輸血・細胞治療学会
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