日本輸血細胞治療学会誌
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原著
自己血採血後の遅発性副作用の発生率と危険因子
鈴木 啓二朗小田原 聖高舘 潤子佐々木 さき子後藤 健治木村 美代子村松 協子諏訪部 章
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2017 年 63 巻 5 号 p. 691-699

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抄録

自己血採血後の遅発性副作用(delayed reactions,DRs)は,採血室外での失神や転倒につながる採血後副作用として認識されているが,その詳細は明らかではない.本研究は当院で自己血採血を行った患者(294名)のDRsの発生率と危険因子を後方視的に調査した.DRsは,採血から1週間以内に採血室外で発生し,原病と合併症以外の症状と定義した.初回自己血採血後のDRs発生患者群と非発生患者群を比較し,また多変量によるロジスティック回帰分析により,DRsの発生率と危険因子を解析した.初回自己血採血後のDRs発生率は33.7%で,症状は採血当日に最も多くみられた(26.9%).DRsを発生した患者の多くは,頭重感・頭痛,ふらつき,倦怠感,眩暈を訴えたが,ほとんどの症状は採血後4日目までに軽快した.DRsの有意な危険因子は,女性,低推定循環血液量(<3,900ml),および軽度な頻拍(75~89/分)であった.本研究は,当院の自己血採血後DRsは決して頻度の少ない副作用ではなく,その発生には自己血採血による循環動態の変化および自律神経系の変調が関与している可能性を示した.

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© 2017 日本輸血・細胞治療学会
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