日本輸血細胞治療学会誌
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原著
E型肝炎ウイルスの遺伝子型3型株および4型株迅速鑑別検査法の開発
飯田 樹里小林 悠坂田 秀勝松林 圭二佐藤 進一郎生田 克哉紀野 修一
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2019 年 65 巻 6 号 p. 858-864

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抄録

E型肝炎ウイルス(HEV)はE型肝炎の原因ウイルスである.北海道では高病原性である4型株の検出頻度が高く,また2例の輸血後感染事例が確認されたため,献血者におけるHEV核酸増幅検査を試行的に実施している.HEV陽性検体についてはRNAの定量に加えて分子系統樹解析による遺伝子型決定を行っているが,これには数日を要する.そこで3型と4型の迅速鑑別法としてマルチプレックスreal-time RT-PCR法(鑑別PCR)を開発した.3型,4型株検出用特異プローブの標識には異なる蛍光色素を用いた.鑑別PCRによる遺伝子型決定までの所要時間は約4.5時間であり,現行のHEV RNA定量検査との同時測定が可能であった.鑑別PCRの平均検出感度は,血漿1ml使用時において,3型で38IU/ml,4型で68IU/mlと推定された.またHEV陽性検体340本中297本について鑑別PCRで決定された遺伝子型は,分子系統樹解析の結果と一致した.今回開発した鑑別PCRにより,献血者本人への受診勧奨や,医療機関に対するE型肝炎に係る有用な診療情報提供が早期に可能になると考えられる.

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© 2019 日本輸血・細胞治療学会
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