2020 年 66 巻 6 号 p. 687-694
近年,免疫グロブリン静注療法(IVIG)の適応疾患・病態は拡大し,2019年に「抗ドナー抗体陽性腎移植における術前脱感作」が適応となった.導入時免疫抑制療法の進歩により,移植早期の細胞性拒絶反応は著明に減少したが,レシピエントがドナー特異的抗体(donor specific antibody:DSA)を有する場合,脱感作を行わないと抗体関連拒絶反応(antibody mediated rejection:AMR)を引き起こし,移植腎機能障害や機能廃絶を来す.
IVIGは,血漿交換やリツキシマブとの併用で,クロスマッチ陽性,DSA高感作症例に対する有用性が示されている.しかし,脱感作を実施する明確なカットオフ値や最適な投与量,スケジュールは示されておらず,標準化された検査方法もまだないのが現状である.また,脱感作に成功し,移植が実施できても,AMRが生じた場合の治療方法や術後に新たに生じたDSAが関与するAMRについての治療方法も確立されていない.
まだ残された問題は多いが,脱感作により今まで移植実施の適応外であった慢性腎不全患者に腎移植という根治療法が提供できるようになったのは意義があることである.