日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
骨髄濃縮により同種骨髄移植を施行し得た抗IgA抗体を有するIgA非欠損例
新山 侑生澤山 靖藤岡 真知子加藤 丈晴糸永 英弘佐藤 信也安東 恒史今泉 芳孝新野 大介木下 克美渡辺 嘉久長井 一浩宮﨑 泰司
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2022 年 68 巻 4 号 p. 491-495

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抄録

IgA欠損患者に対する血液製剤の使用に際しては,IgAを含まない製剤の使用が推奨されているが,抗IgA抗体を有するIgA非欠損患者に対する輸血実施の対応は確立されていない.今回我々は,抗IgA抗体を有するIgA非欠損例において,洗浄血小板製剤の使用と骨髄濃縮により非血縁者間同種造血幹細胞移植を重篤な有害事象なく施行し得た1例を経験した.症例は48歳男性,基礎疾患は原発性骨髄線維症で,アレルギー・輸血・手術歴はない.初回輸血から9日後の血小板輸血中にアナフィラキシーが出現した.IgA欠損はなかったが,初回輸血前検体でIgG型抗IgA抗体を認め,抗体獲得機序は不明であった.洗浄血小板製剤に切り替えて対応し,有害事象なく経過した.また,ABO血液型一致非血縁者間同種移植であったが,輸注前に骨髄濃縮を実施することで輸注関連有害事象を認めることなく施行できた.移植後はドナー型造血となり,抗IgA抗体価の経時的な減少も認めた.抗IgA抗体保有IgA非欠損例においても,安全に移植を行うため,移植片の骨髄濃縮と洗浄血液製剤の使用が有用であると考える.

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© 2022 日本輸血・細胞治療学会
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