2006 年 52 巻 3 号 p. 422-430
【背景】静注用免疫グロブリン (IVIG) に関しては未だ明確な使用基準がなく, 適正使用を推進するには使用指針の作成が急務である. 我々は指針作成を最終的な目標とし, 先ずIVIGについて全国の中・大規模病院における疾患別の使用実態を調査, 検討した.
【方法】全国の400床以上の732病院を対象に, 平成15年7月から9月までの3ヵ月間におけるIVIG使用状況をアンケート形式で調査した. 調査内容は疾患別の使用患者数および使用量である.
【成績】本調査の有効回答率は36.6% (268/732病院) であった. 総使用患者数 (8,570例) 中の小児群は1,955例で自己免疫疾患が38%, 術後感染症を含めた感染症が33%であり, 成人群は6,615例で自己免疫疾患が10%, 感染症が73%と両群間に有意差が認められた. 総使用量 (171,018g) では, 小児群 (28,684g), 成人群 (142,334g) での自己免疫疾患の占める割合は各々60%, 35%であり, 感染症は各々15%, 45%であった. 感染症以外の患者数をみると, 小児群では川崎病が44.5%と高頻度であり, 成人群では特定の疾患に多く使用される傾向は認められなかった. 感染症に関しては両群とも細菌感染症に多く使用されていた. また, 重症感染症の指標として設定したCRP値の境界値 (小児群: 10mg/dl, 成人群: 15mg/dl) 以上での使用例は小児群では28%と低率であり, 成人群でも51%と約半数に過ぎなかった.
【結論】本調査から自己免疫疾患ならびに感染症が今後のIVIG需要量を規定する主な疾患であると判断された. 特に, 感染症のうち, 重症と考え難く, 不適正と考えられる症例にもかなり使用されている実態が明らかになった.