2019 年 33 巻 4 号 p. 151-158
本研究は,潜熱蓄熱物質をナノサイズで分散させたナノサスペンション型潜熱蓄熱材の熱伝導率および密度の測定評価結果を示すものである.供試ナノサスペンション中に分散される潜熱蓄熱材は,融点50.6℃のテトラコサンを採用し,非イオン界面活性剤を用いて蒸留水中に分散する.超音波ホモジナイザを用いて分散された潜熱蓄熱材料は,265ナノメートルの平均直径を有する.流動性を有する潜熱蓄熱材料としてのナノサスペンションの密度と熱伝導率のデータは,潜熱蓄熱システムの設計に有用な基礎データを提供する.本研究では,ナノサスペンションの密度測定には密度浮ひょうが,熱伝導率測定には非定常細線加熱法による実験装置を用いた.測定範囲は,分散質質量組成比10.0~40.0mass%,温度10~84℃である.供試ナノサスペンションの密度は加成性法則による推定が可能であること,熱伝導率の推定にMaxwell-Euckenの分散相モデルの適用が有効であることを示す.