抄録
2001~2015年に切除手術を実施した犬猫の耳道腫瘍25例(22頭)の臨床的特徴と治療成績を再評価した。21例は垂直耳道(18例)ないし水平耳道(3例)から発生した小さな境界明瞭な腫瘤で、4例は中耳由来の猫の炎症ポリープであった。犬19例中17例は病理組織学的に診断され、12例(71%)が良性で、5例(29%)が耳垢腺癌(3例は非浸潤癌、2例は浸潤性不明)であった。犬19例は外側耳道切除術(LECR)を中心とする保存的手術で治療し、水平耳道の耳垢腺癌の1例(LECR・切除生検後の1.5ヶ月後に再発)を除き、術後の再発がみられた症例はなかった。猫の耳垢腺癌(非浸潤癌)の2例のうち、垂直耳道の1例はLECR後の35ヶ月間、水平耳道の1例は全耳道切除後の43ヶ月間、それぞれ再発・転移は認められていない。猫の炎症ポリープの4例は牽引切除とプレドニゾロン投与で再発はみられていない。以上の結果から、犬猫の境界明瞭な耳道腫瘤は良性ないし非浸潤腫瘍が多く、これらの多くは保存的手術で管理できることが示唆された。