2020 年 51 巻 2 号 p. 23-28
4年前に脾臓結節性過形成の自壊による脾摘歴がある11歳のラブラドール・レトリバーが、1週間前からの元気食欲低下と血尿を主訴に来院した。全身性炎症反応症候群(SIRS)と伴に腹腔内の多発性腫瘤が認められたため、試験開腹を行った。腫瘤は大網や腹壁に散在し、それらを摘出した後の病理検査では、全て異所性脾臓と診断された。術後は良好に回復した。SIRSの主因は化膿性炎症と思われ、感染源は泌尿生殖器と推定された。偶発的に発見された異所性脾臓は、過去の良性脾臓病変の自壊による後天性の脾症と考えられた。脾摘歴のある犬の腹腔内の多発性腫瘤においては、異所性脾臓の可能性も考慮すべきと思われた。