2025 年 31 巻 1 号 p. 25-31
犬アトピー性皮膚炎(CAD)の治療管理においては,薬物療法以外に栄養療法が補助的に使用される。本研究では,CADにおける臨床的有用性が長期給与で確認された療法食を対象に,短期給与における臨床的有用性および皮膚バリア機能への影響を評価した。本試験はオープン試験で行った。合計16例の臨床症状が軽度から中等度のCAD症例を組入れ,試験食を2ヶ月間給与した。試験開始前,1ヶ月および2ヶ月後に犬アトピー性皮膚炎重症度指数(CADESI-04),痒みスコア(PVAS),経表皮水分蒸散量(TEWL),角質水分量(SSH)を評価した。その結果,CADESI-04およびPVASの中央値は給与前(10.5,3.00)と比較して,2ヶ月後で有意な低下が認められた(6.00,1.50,p<0.05)。平均TEWL(g/m2·h)は給与前(8.00)と比較して,給与1ヶ月後に有意に低下した(6.60,p=0.025)。平均SSH(A.U)は給与前(12.1)と比較して,給与2ヶ月後に有意に上昇した(18.7,p=0.003)。試験食との関連のある有害事象は認めなかった。本研究の結果より,試験食は皮膚症状を短期間で緩和し,皮膚バリア機能を回復させうるCADの有用な補助療法となりうる可能性が示唆された。