既存の治療で改善のない犬アトピー性皮膚炎の症例に対して,免疫調整能や抗炎症作用を期待し,国内で初めて同種脂肪由来間葉系幹細胞(Ad-MSCs)による治療を行なった。その結果,1ヶ月程度で症状の改善がみられ,観察期間である約8ヶ月間にわたり,プレドニゾロンおよびシクロスポリンを症状の悪化を認めることなく治療開始時の半量以下に減薬できた。なお,観察期間中に有害事象はみられなかった。Ad-MSCsは難治性犬アトピー性皮膚炎に対する治療手段として,安全かつ有用な選択肢となる可能性が示唆された。
ベンガル猫,未避妊雌,9ヶ月齢。2ヶ月齢より鼻平面に乾燥,鱗屑が認められ,徐々に悪化傾向にあった。ステロイド反応性下痢症のために投与したプレドニゾロンにより鼻鏡症状も部分的に改善した。しかし,反応は一過性で,同用量では再び悪化したため,プレドニゾロン休薬後にパンチ生検を実施した。病理組織では,表皮の肥厚および顕著な正角化性角化亢進,表皮直下の真皮にごく軽度のリンパ球浸潤が認められた。生検部位の治癒後,ジフルプレドナートの塗布を行った。鼻鏡症状は徐々に改善し,現在は週1回の塗布で維持している。