森林野生動物研究会誌
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馬追・野幌丘陵における野生化アライグマの生息数(密度)の推定とその生息環境
前崎 武人青柳 正英林 文
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2001 年 27 巻 p. 5-16

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抄録

1 野生化したアライグマの捕獲を、馬追及び野幌丘陵の2地域を9地区に分けて実施した。2 ワナは、4〜500mの間隔で方形区状に配置した。1地区のワナ数は50個(一部地区では56個)、捕獲日数は21日間とした。捕獲は、7月上旬から10月下旬まで行った。3 捕獲したアライグマの頭数は237頭、内訳は成獣153頭(雌113、雄40)、幼獣84頭(雌36、雄48)であった。地区別には、馬追丘陵の274号地区以北では35〜45頭と多く、以南では9〜18頭と少ない。野幌丘陵は、北地区28頭に比し、南地区は昨年の捕獲効果もあり12頭であった。4 除去法による推定生息数は、全体が243頭で捕獲数に近似した。地区別にも同様で、最大でも2頭の差異に止まっている。5 生息密度(100ha当たり)は、ワナ有効面積をワナ配置の外側ラインから200mと400mに拡大した区域として求めた。馬追丘陵の多い地区で4頭(400mの場合3頭)、少ない地区や野幌丘陵では3〜0.5頭(400mの場合2〜0.5頭)とみられる。6 数量化IIで生息環境の解析を行った。外的基準は、捕獲数0、1、2頭以上の3区分とした。環境要因の項目は、土地利用、林相、植生、植生密度、水環境、畜舎・人家からの距離の7つをあげた。7 環境要因項目のうち土地利用、水環境、畜舎からの距離がアライグマの生息の有無や生息数の多少に対し強い影響力を及ぼしているとみられる。これら項目のうちスコアの大きいカテゴリーは、土地利用では水田地帯の森林の林縁、畑地帯の畑周辺、原野、庭などで、水環境では大きな池、畜舎では100m以内の地点などとなっている。従って、アライグマの生息最適地としては、水田地帯にある池の周辺地で、しかも畜舎から100mの範囲にある地点ということができる。

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