抄録
経過約10ヵ月間で臨床的に呼吸異常および運動不耐性を呈して死亡した13歳齢のセイウチを病理学的に検索した。肉眼的に全身諸臓器におけるうっ血, 肺全域にわたる重度の間質性気腫および肺硬度の増大, 気管・気管支腔内における白色泡沫状物貯留, 肝臓実質の黄色化・小葉明瞭化, 右心室拡張および右心室壁菲薄化が認められた。病理組織学的には, 全身諸臓器の高度なうっ血, 肺における慢性うっ血水腫, うっ血肝などの全身性の循環障害を示唆する所見が認められた。心臓では, 間質の水腫を伴う大小不同の波状心筋線維束の出現および稀に石灰沈着を伴う心筋の微小壊死巣が散在していた。本症例の全身性循環障害の原因について考察した。