抄録
超微細構造の観察を行うことによって,卵母細胞の凍結保存や体外培養のための重要な知見が得られる。本研究では,透過型電子顕微鏡を使用して,クロミンククジラ卵母細胞の体外成熟の培養前後において,凍結前および凍結・融解後の超微細構造を観察した。成熟前の卵母細胞では,卵細胞質と卵丘細胞突起問に,また卵細胞質内のミトコンドリアや滑面小胞体を含む細胞内小器官の間に緊密な接着部が存在していた。ミトコンドリアや脂肪滴のような卵細胞質内小器官は細胞質の辺縁で塊状に分布していたが,小胞は細胞質の中心部に位置していた。体外成熟後の新鮮卵母細胞では,細胞質内小器官は細胞質内全体に分布し,ミトコンドリアの形態に変化が見られた。凍結・融解後の卵母細胞では,卵細胞質の変性が観察され,凍結・融解過程において卵細胞質の微細構造に大きな障害が生じたことが伺われた。