日本野生動物医学会誌
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特集論文
人,家畜,野生動物,生態系を守る保全医学
根上 泰子
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2011 年 16 巻 2 号 p. 89-95

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抄録

 近年の高病原性鳥インフルエンザなどの感染症や環境汚染物質などの非感染症が,人や家畜の健康のみならず,野生動物の健康にも影響を与えており,人間活動がこれらの問題に直接的あるいは間接的に関連している。しかし日本には野生動物の衛生に関する公的なシステムは存在しない。一方諸外国には,野生動物の衛生管理に関する,政府機関,大学,組織などの異なる組織間での連携システムおよび公的なシステムが存在している。そこで本論では,まず保全医学が生まれた背景と,日本における野生動物衛生問題の現状について述べ, 次に,歴史的,社会的,経済的観点などから,日本と,米国を中心とした諸外国の野生動物衛生管理ステムの比較を行い,日本での地域レベルでの保全医学的な連携の実践事例をあげ,最後に,日本での,人,家畜,野生動物,生態系を守る保全医学の概念に基づいた野生動物衛生管理システムへの提案を行った。

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© 2011 日本野生動物医学会
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