抄録
交通事故で死亡した2頭の野生ケナガネズミ(Diplothrix legata)を沖縄県国頭村で2011年9月に得た。剖検時に,肉眼的なサルコシストが舌,咬筋,横隔膜および外腹斜筋などの骨格筋で多数認められた。寄生のある横紋筋の組織学的観察では,特に炎症反応はみられなかった。サルコシストから抽出したDNAのシークエンスにより,1,797塩基の18S rRNA(GenBank accession number AB691780)および1,441塩基の28S rRNA(GenBank accession number AB691781)の肉胞子虫の遺伝子を得た。これは南西諸島固有の希少種であるケナガネズミにおける肉胞子虫感染の初記録である。