抄録
1968年に日本において食用ライスオイルにPCBsが混入するというカネミ油症事件が起こった。この不幸な出来事が起きてから約30年が経とうとしている現在でも, 化学物質による環境汚染は我々の大きな関心事である。野生生物を用いて環境汚染の程度を評価する場合, 大きく分けて2つのアプローチが考えられる。1つは生物体内に蓄積している汚染物質を検出する方法, もう1つは生物が汚染物質に対して起こす反応を評価する方法である。この総説では後者の汚染物質に対する反応を見る, 生物のチトクロームP450(P450)を用いた環境モニタリングの基礎と現在進められている研究について紹介した。