2016 年 21 巻 3 号 p. 47-51
近年,医学および獣医学から生物多様性保全に貢献する学問分野として保全医学が台頭してきている。感染症問題もこの保全医学からの視点で捉えることが大事で,有効な感染症対策を考えるには,人や家畜での病因学や疫学に関する情報に加えて,野生動物を含む自然界での宿主,ベクターおよび病原体(微生物)の生態についての知識が必要である。本稿では,ライム病および回帰熱Borrelia spp.,Anaplasma spp.,Ehrlichia spp.,Candidatus Neoehrlichia sp.およびBabesia spp.といったマダニ媒介性感染症を例にとり,動物宿主-ベクター-病原体の関係を“disease ecology”の観点から眺める。