日本野生動物医学会誌
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特集論文
認定鳥獣捕獲等事業者制度における野生動物医学の役割 -カワウ管理における科学的・計画的捕獲-
須藤 明子
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2016 年 21 巻 3 号 p. 81-90

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抄録

 コロニーにおけるカワウの銃器捕獲は,カワウを拡散させ個体数を増加させる危険があり,カワウでは個体数調整が困難と考えられてきた。しかし,専門的・職能的捕獲技術者による少数精鋭の捕獲体制(シャープシューティング)による,科学的根拠に基づく計画的捕獲は,カワウの個体数調整を可能にすることがわかった。滋賀県では,カワウによる漁業被害,ならびにコロニーにおける植生破壊が深刻であった。様々な被害対策が実行されたが,カワウの個体数も被害も増加し続けた。筆者らは,滋賀県水産課事業として,プロジェクトKSS(カワウシャープシューティング)を開始し,2大コロニー(竹生島と伊崎半島)において,2009~2015年の7繁殖期に,165日間(射手373人日)で, 54,585羽を捕獲した。その結果,県内のカワウ生息数は,繁殖前期(5月)で,37,066羽(2008年)から7,659羽(2015年),繁殖後期(9月)で,74,688羽(2008年)から5,940羽(2015年)に低減した。個体数の減少と連動して,漁業被害は軽減し,植生被害も回復傾向にある。被害の減少によって,カワウを撲滅すべきという声は小さくなった。ほどほどのカワウとなら,共に暮らせるかもしれないという意見が聞かれるようになった。目指すべきゴール「カワウとの共存」は,大規模捕獲によって現実味を帯びてきた。鳥獣保護法の改正に象徴される「捕獲の強化」という社会の要請に応じた,科学的・計画的捕獲の推進は,野生動物医学が果たすべき大きな役割である。

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