日本野生動物医学会誌
Online ISSN : 2185-744X
Print ISSN : 1342-6133
ISSN-L : 1342-6133
特集
希少種の救護個体に関する法的規制と環境省事業での適用事例
安田 直人
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 21 巻 4 号 p. 115-119

詳細
抄録

希少動物に関連する法律としては,「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(「鳥獣保護管理法」)と「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(「種の保存法」)がある。「鳥獣保護管理法」に基づく鳥獣の保護および管理を図るための事業を実施するための基本的な指針の中で,傷病鳥獣の救護個体の取り扱いが記載されている。希少鳥獣については,繁殖,研究,教育等のための活用または終生飼養を検討し,これらの対処が困難な場合においては,専門家の意見も参考に,できる限り苦痛を与えない方法での致死を検討するとされている。種の保存法に基づく国内希少野生動植物種については,傷病個体に関する規定はなく,繁殖,研究,普及啓発等を目的として飼養していくことになる。国内希少野生動植物種の傷病個体の致死は法的に許されていないと解される。保護増殖事業が実施され,域外保全が行われているトキ(Nipponia nippon)やヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae)においても,野生復帰が困難な個体に関する扱いについては明確な方針が示されていない。

著者関連情報
© 2016 日本野生動物医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top