日本野生動物医学会誌
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特集
希少猛禽類の終生飼育における課題
角田 真穂
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2016 年 21 巻 4 号 p. 131-135

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抄録

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」によって希少種は重要感染症への罹患など,特殊な条件下以外での安楽殺を行うことはできない。そのため,希少種の傷病鳥獣救護においては,野外放鳥,放獣が困難となった個体は基本的には終生飼育となる。そのような状況の中,年間20件近い希少猛禽類の生体収容がある釧路湿原野生生物保護センター(以下WLC)ではオオワシ,オジロワシの終生飼育個体数が年々増加しており,本来の救護業務に支障をきたし始めている。現在WLCでは終生飼育個体を供血,普及啓発,事故防止対策の効果検証などに活用する努力がされているが,実際に活用されている個体は少ない。今後,施設の限られたキャパシティの中で種の保存に効果的な救護業務を実施するならば,終生飼育個体をただ継続飼育するのではなく,安楽殺の検討や,さらなる活用方法の模索など,新たな対応が求められる。

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© 2016 日本野生動物医学会
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