日本野生動物医学会誌
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原著論文
スラウェシバビルサ(Babyrousa celebensis)の営巣行動
伊東 政明Alastair A. MACDONALDKristin LEUSI Wayan BALIKI Wayan Gede Bandem ARIMBAWAI Dewa Gede Agung ATMAJA
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2019 年 24 巻 1 号 p. 9-20

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抄録

 インドネシアにおいて飼育下スラウェシバビルサの営巣行動504例が観察され,時刻,場所,巣材を含む行動特性が記録された。本種は,性別を問わず,生後15週以降の幅広い年齢で,夕方の給餌時刻と日没時刻の間に相当する午後5時から午後6時の時間帯に高頻度に,壁,大木,間隙等の構造物の傍らに寝屋を作った。落葉落枝の収集のみならず,後肢で起立し,立木から様々な部位を採取する巣材収集行動も観察された。また,巣材不足の際,牧柵から棒材を引き抜き,巣材を補足する行動も記録された。群飼では,営巣行動を主導する特定の個体は認められず,共同作業により完成した巣は共用された。バビルサの休息睡眠用の営巣行動は正常な行動レパートリーの一つであり,飼育下個体への巣材の提供は効果的なエンリッチメントになる。

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© 2019 日本野生動物医学会
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