横浜市内に生息するニホンアカガエル2個体群間の補強について,その遺伝的妥当性を評価するために,ミトコンドリアDNAの調節領域の塩基配列および10領域のマイクロサテライトDNA の遺伝的多型に基づき,両個体群間の遺伝的関係を解析した。その結果,両個体群は遺伝的に近縁であるものの,有意な遺伝的分化を示した。本研究により示された2個体群間の遺伝的関係から,2個体群間で補強を実施することに遺伝的な問題はないと考えられる。
インドネシアにおいて飼育下スラウェシバビルサの営巣行動504例が観察され,時刻,場所,巣材を含む行動特性が記録された。本種は,性別を問わず,生後15週以降の幅広い年齢で,夕方の給餌時刻と日没時刻の間に相当する午後5時から午後6時の時間帯に高頻度に,壁,大木,間隙等の構造物の傍らに寝屋を作った。落葉落枝の収集のみならず,後肢で起立し,立木から様々な部位を採取する巣材収集行動も観察された。また,巣材不足の際,牧柵から棒材を引き抜き,巣材を補足する行動も記録された。群飼では,営巣行動を主導する特定の個体は認められず,共同作業により完成した巣は共用された。バビルサの休息睡眠用の営巣行動は正常な行動レパートリーの一つであり,飼育下個体への巣材の提供は効果的なエンリッチメントになる。
本研究では,ウシとヒツジのマイクロサテライトマーカーを用いシカ科最小種であるプーズー(Pudu puda)の父子判定を試みた。使用した合計15のマーカーのうち,9つで増幅産物が得られ,7つはアリル数が3から5であり多型が検出された。多型がみられたマーカーの大部分は,父子判定に利用することができた。これらのマーカーは,希少動物であるプーズーの親子鑑定や遺伝的多様性の解析に有用である可能性が示された。