2021 年 26 巻 3 号 p. 75-79
市原ぞうの国において,これまで積極的に取り組みの無かった「調査・研究」を筆者らはゼロから始めた。動物園主体の研究活動には,時間の確保や協力機関との連携など様々な困難があったものの,試行錯誤の末にアジアゾウに関する研究成果をいくつかまとめることができた。研究成果となったアジアゾウの血中骨代謝マーカー値の測定やゾウ血管内皮ヘルペスウイルスの迅速診断は,現場の日常業務に還元することができ,今日の獣医療業務に貢献する結果となった。また,研究を通じて国内外に動物園の研究活動を知っていただくことができ,様々な研究者と出会うこともできた。動物園での研究の重要性が浸透し,動物園と研究の歩み寄りは進んでいるものの,動物園“が”研究するには様々な制約や困難がある。そういった障害を乗り越え,今後も継続して動物園主体の研究活動を行い,日本の動物園水族館での研究活動を盛り上げていきたいと考えている。