日本野生動物医学会誌
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原著論文
Polymerase chain reaction (PCR) とloop-mediated isothermal amplification (LAMP) 法の コンビネーションによるクジラ型パラコクシジオイデス症の診断法の研究
鐘ケ江 光Igor Massahiro de Souza SUGUIURA皆川 智子Ono Mario AUGUSUTOEiko Nakagawa ITANO和田 新平中村 雄一周本 剛大佐野 文子植田 啓一
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2021 年 26 巻 4 号 p. 103-111

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抄録

クジラ型パラコクシジオイデス症 (paracoccidoioidmycosis ceti:PCM-C) は,イルカを宿主とし,難治性慢性肉芽腫性ケロイド状皮膚炎を特徴とする人獣共通真菌症である。原因菌は非培養性の Paracoccidioides brasiliensis var. ceti で,中南米を流行地とする高度病原性真菌症のパラコクシジオイデス症(PCM) の原因菌 P. brasiliensisと遺伝子型は同一である。確定診断は臨床症状と病理像での酵母細胞の証明であるが,遺伝子情報による診断も重要である。今回,遺伝子情報を欠くものの,PCM-Cが疑われていたイルカ皮膚病変生検組織よりnested-PCRで原因菌の特異的糖タンパク抗原遺伝子であるgp43が検出され,配列は既報のPCM-C国内第3症例目と98.9%相同であった。そこでPCMの診断用に設計されたLAMP法を応用したところ,PCRとLAMP法の組み合わせによりgp43の増幅に成功したことから,この手法は迅速診断法としての有用性が期待できる。

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