日本野生動物医学会誌
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原著論文
『とらばさみ』によるコウノトリの負傷とその治療記録および 動物の負傷・死亡の発生とその課題
松本 令以堀江 真優大迫 義人
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2021 年 26 巻 4 号 p. 113-126

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抄録

コウノトリ国内再導入個体群におけるとらばさみにより負傷したコウノトリ(Ciconia boyciana)の治療記録,最も多くコウノトリの繁殖ペアが生息する兵庫県北部地域におけるとらばさみの販売状況,および国内における2007年4月以降のとらばさみによる動物の負傷・死亡事例の発生状況について調査した。再導入が始まった2005年から2020年12月までに,とらばさみによるコウノトリの負傷事例が2例確認された。兵庫県北部地域では7店舗でとらばさみが販売されており,法律に基づいた使用に関する商品掲示の内容には誤りもみられた。コウノトリの負傷事例の再発防止のため,商品掲示や販売方法の変更について,7店舗のうち豊岡市内の全4店舗から協力を得た。本報告のコウノトリの2例に加え,新聞記事データベースによる調査によって,猟具としての使用が法律で禁止された2007年4月以降にとらばさみによって負傷または死亡した動物が,合計35個体(うち10個体がレッドリスト掲載種)確認された。国内におけるとらばさみの使用実態についてさらに調査を進めるとともに,国外の先行研究を踏まえて適切な使用方法に関する研究を国内でも積み重ねることが必要である。それらの研究に基づき,とらばさみによる違法捕獲を根絶するためのより効果的な施策およびより適切な法規制が検討される必要がある。

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