日本野生動物医学会誌
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原著論文
アカネズミ(Apodemus speciosus )における経時的精巣制御による雄性生殖細胞アポトーシスの 免疫組織化学的評価並びに精細管及び精巣上体の組織学的観察
岡野 司石庭 寛子玉置 雅紀大沼 学
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2024 年 29 巻 2 号 p. 57-66

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抄録
アカネズミ(Apodemus speciosus)は季節繁殖動物であり,その精子形成活性は年間を通して変化する。一部の哺乳類では, 精巣の退縮は雄性生殖細胞のアポトーシスの増加に起因することが知られている。しかしながら,季節繁殖動物の精子形成期を厳 密に分類して,アポトーシスと季節性の精巣退縮との関連を調査した研究はこれまでにない。そこで筆者らは,本種における雄性 生殖細胞アポトーシスと経時的精巣制御並びに活性化及び退縮の概年周期との関係をTUNEL 染色法を用いて免疫組織化学的に調 べた。さらに,精巣重量及び精子形成の組織学的観察結果を用いて,精子形成活性を9 期(pre-increase,early-increasing,midincreasing, late-increasing,peak,early-decreasing,mid-decreasing,late-decreasing 及びpost-decreasing)に分類し,精細管と 精巣上体の形態学的経時変化を調べた。その結果,生殖細胞アポトーシスの割合はpeak 期付近で低値を示したが,pre-increase, mid-decreasing,late-decreasing 及びpost-decreasing 期で高値を示した。Early increasing 及びmid-increasing 期においても比較 的多くのアポトーシス細胞が観察された。Mid-decreasing 期を除くすべての期間において,アポトーシス生殖細胞の主要なタイ プは精母細胞であった。アポトーシスが細胞消失の主要な原因であり,生細胞の落屑が精巣退縮を加速させると考えられる。本研 究における精細管と精巣上体の組織学的記述は,本種における将来的な精巣の組織学的評価の一助となり,また,他種においても 比較のためのガイドラインとなるだろう。
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