日本野生動物医学会誌
Online ISSN : 2185-744X
Print ISSN : 1342-6133
ISSN-L : 1342-6133
特集
内分泌攪乱化学物質と野生動物 -海棲哺乳動物の汚染を中心に-
田辺 信介
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 5 巻 1 号 p. 1-9

詳細
抄録

『Our Stolen Future』の著者Colbornは, 海棲哺乳動物の異常(個体数の減少, 内分泌系の疾病, 免疫機能の失調, 腫瘍など)を総説としてまとめ, 1968年以降5例にのぼる報告があり, その原因として生物蓄積性の内分泌攪乱物質すなわち有機塩素化合物が関与していることを指摘している。イルカや鯨の仲間は, 有機塩素化合物を驚くほど高濃縮している。たとえば, 西部北大平洋のスジイルカは, 海水中の1千万倍もの高濃度で有機塩素化合物を蓄積している。不思議な現象はこれだけではない。一般に化学物質の濃度は, 陸上の汚染源から遠ざかるにつれて低減するのが普通であるが, 清浄なはずの外洋に棲息しているイルカや鯨は, 陸上の哺乳動物よりはるかに高い蓄積濃度を示す。一方で, 感染症やストランディング(座礁)による海棲哺乳動物の大量変死事件は物質文明の急進した20世紀後半に集中しており, このことは化学汚染の影響を匂わせている。何故, イルカや鯨の仲間が有害物質を高濃縮し異常なほど体内にためるのか, 小論ではこの原因について解説した。

著者関連情報
© 2000 日本野生動物医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top