日本野生動物医学会誌
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原著
人工保育によるジャワマングース(Herpestes javanicus auropunctatus)の成長
小倉 剛川島 由次仲本 政貴織田 銑一
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2000 年 5 巻 1 号 p. 77-85

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抄録

飼育下で生まれた雌雄各1頭のジャワマングースの新生子について, 人工飼育を行い, 生後28週齢までの外部形態の変化を観察した。出産直後のマングースは全身が肉紅色で, 腹部には長さ約10mmの臍帯が付着していた。腹側には3対の乳頭が観察され, 生殖器の形態から雌雄判別が可能であった。全身には灰白色の被毛を有し, 頭部から臀部背側には黒色の被毛を有していたが, 8週齢には成獣と同様の被毛に変化した。乳歯が生え揃ったのは4週齢で, 永久歯は18週齢に萌出が完了した。開眼は雄が19日齢, 雌が20日齢であった。2日齢の体重は雄が24g, 雌は27gで, 28週齢にはそれぞれ958g, 520gに達した。1日増体量は15日齢まで連続して正の値を示したが, 離乳を行った16日齢に初めて減少した。その後, 1日増体量は増減を繰り返し, 体重増加に周期性があった。2日齢の頭胴長は雄が83mm, 雌が84mmで, 28週齢にはそれぞれ350mm, 300mmになった。頭胴長の増加は1週齢から4週齢の間が最も多かった。体長と体重の比は成長に伴って緩やかに増加し, 体型は成長に伴って丸みを帯びた。雌雄の体型の相違は野生のマングースが離乳する7週齢頃より明らかになった。爪の形態が成獣と同じ状態になる時期も, 6〜8週齢であった。本種にとってこの時期は形態的かつ機能的に, 幼獣から成獣へと変換をとげる重要な時期であると考えられた。

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