抄録
2002年1月11日,神戸市立王子動物園で飼育中の11歳の雌アジアゾウ(Elephas maximus)が死産した。同個体は1999年以降同居している雄との間で繁殖行動を示し,2000年, 2001年には腹部の膨満感や乳頭の腫脹が認められるようになった。そのため妊娠診断を目的に,2000年5月より月1回の割合でラジオイムノアッセイ法(RIA)による血清中のプロゲステロン(P),エストラジオール(E2)およびプロラクチン(PRL)の測定を行った。また1999年9月4日から週1回採血し凍結保存していた血清について,エンザイムイムノアッセイ法(EIA)によりPおよびE2の測定を行った。その結果2000年4月以降EIAによりPの持続的な高値が認められ,妊娠が推測された。またPが上昇する以前にはEIAによるE2には周期性を認めなかった。P値についてはRIAおよびEIAの間に正の相関係数が認められた(r=0.763,p<0.01)。なおRIAによるE2およびPRLは測定限界以下であった。EIAによるPの変動により推定された妊娠期間は640日であった。