日本野生動物医学会誌
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原著論文
タヌキ(Nyctereutes procynoides)の卵巣におけるP450aromの免疫局在およびmRNAの発現
翁 強村瀬 哲磨淺野 玄坪田 敏男
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2004 年 9 巻 2 号 p. 65-70

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抄録
2001年11月〜2003年4月の間に,神奈川県において野生雌タヌキ5頭(11月,2月,3月および4月)の死体を収集した。死体より卵巣を摘出した後,一方を液体窒素で急速凍結するとともに,残りをホルマリン固定し,パラフィン切片を作製した。免疫組織化学を実施し,P450aromの局在を確定した。また,凍結保存した卵巣からmRNAを抽出した後,RT-PCR法にてcDNA断片を増幅した。増幅したDNAのうちP450aromをコードすると予想されるサイズのバンドを確認し,増幅DNA断片のクローニングを行った。プラスミドにインサートされたことを確認した後,シークエンスを行った。免疫組織化学の結果,P450aromは内卵胞膜細胞および卵胞上皮細胞(顆粒層細胞)に認められた。また,3月における黄体細胞および4月における妊娠黄体を構成するほとんどの細胞の細胞質に陽性反応が認められた。PCRによりP450arom cDNAバンドの大きさは289bpであった。また,シークエンスにより得られたP450aromの塩基配列はヒト,ウシおよびラットのそれと76.3%,78.2%および72.6%の相同性を示した。以上の結果より,野生タヌキにおいて卵胞上皮細胞(顆粒層細胞),内卵胞膜細胞および黄体細胞がP450aromを発現し,エストロジェン合成能を有することが示唆された。
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© 2004 日本野生動物医学会
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