抄録
千葉県房総半島にはアカゲザル(Macaca mulatta)と疑われるサル類が生息する。この外来種のサル類の存在により,在来種であるニホンザルへの新たな寄生体感染の危険性も指摘されている。そこで,この基礎情報として当該地域におけるニホンザルの寄生生物の保有状況を把握するため,有害駆除されたニホンザル50個体について,寄生虫(節足動物,蠕虫および原虫)全般および一部ウイルス・細菌の検査を実施した。その結果,Pedicinus obtusus, P.eurygaster, Streptopharagus pigmentatus, Storongyloides fulleborniおよびTrichuris trichiuraの5種の寄生虫が認められた。いずれもニホンザルにおいて既に報告のある種であった。シラミ類Pedicinus属2種の濃厚寄生が認められた個体については,両種の詳細な寄生部位の記録を行なった。今回の調査では,コクシジウム類とBabesia属の寄生は認められなかった。Rickettsia,Coxciellaおよびボルナウイルスの感染状況については,別に報告予定である。