日本野生動物医学会誌
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研究短報
山梨県の民家で発見されたニホンオオカミ頭蓋の骨学的および画像解析学的検討
遠藤 秀紀酒井 健夫伊藤 琢也鯉江 洋木村 順平
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キーワード: CT, ニホンオオカミ, 山梨県
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2004 年 9 巻 2 号 p. 109-114

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抄録
山梨県の民家に保存されてきたイヌ属と思われる頭蓋を鑑定し,ニホンオオカミ(Canis hodophilax)の頭蓋であると断定した。大きさは頬骨弓最大幅が126.3mm,硬口蓋最大長が107,9mm,両眼窩間最小距離が38.2mmだった。背腹方向に小さな前頭骨,外側後方に広がった頬骨弓全体が確認された。前翼孔は吻尾方向に二分され,また口蓋骨後縁の正中部分に窪みが確認された。また頬骨弓の最背側領域は側頭骨頬骨突起から構成されていた。計測形質も非計測形質も本資料が絶滅したニホンオオカミの頭蓋であることを示していた。加えて,CTスキャンによる画像解析の結果,鼻甲介の,背,中,腹の3つの部位が確認され,イヌと同様に鼻甲介が鼻腔内で複雑な構造を備えていることが明らかとなった。また,CT画像上で,明瞭な鼻中隔軟骨や背腹方向に狭い前頭洞が観察された。これらのCTの画像データは,ニホンオオカミの嗅覚機能の議論に貢献するものと思われる。
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© 2004 日本野生動物医学会
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