我々はこれまで、歯周病細菌Actinobacillus actinomycetemcomitansがマクロファージに感染すると、G1期における細胞周期の停止やアポトーシスが誘導されることを見出した。アポトーシスのプロセスでは、ミトコンドリアからのシトクロムCの放出とcaspase-3,-9に至る経路が解明された。そこで本研究では、A.actinomycetemcomitans感染マクロファージにおいて、caspaseの関わりを中心に細胞内情報伝達系の解析を行った。マウスまくりファージ細胞株J774.1に、A. actinomycetemcomitansのY4株を感染させ、アポトーシスに関わる細胞内シグナルタンパクの発現をWestern blottingにて解析した。また、caspase阻害剤を使用し、フローサイトメーターにて細胞周期とアポトーシスの発現を調べ、細胞内シグナルタンパクの発現をWestern blottingにて解析した。A. actinomycetemcomitans感染後、caspase-6,-7の活性が上昇し、核膜構成タンパクのLamin AとDNA修復に関与するPARPのcleavageが検出された。また、caspase-3,-6,-7阻害剤を作用させるとG1期の細胞周期は確認されたがアポトーシスは抑制され、Lamin AとPARPのcleavageは確認されなかった。以上により、感染マクロファージのアポトーシス誘導においてcaspase-6,-7が活性化し、Lamin AとPARPのcleavageが関与していることが明らかとなった。