関西医科大学雑誌
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形質細胞様樹状細胞は,ICOSリガンドによるIL-10産生制御性T細胞誘導を促進するサイトカイン産生能を有する
尾形 誠
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2015 年 66 巻 p. 19-24

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抄録

ウイルス刺激により成熟したPlasmacytoid樹状細胞 (PDC) は,TLR7とTLR9を発現し,大量のI型IFNsを産生する.またnaive CD4陽性T細胞に対し,IL-10とIFN-γを産生するTr1細胞へ分化誘導し,自然免疫系において中心的な役割を担っている.一方IL-3の刺激にて成熟したPDCは,conventional Th2サイトカイン (IL-4, IL-5, IL-13, IL-10) 産生T細胞への分化誘導能を有する.このいずれの場合においてもPDCは,IL-10産生T細胞を誘導し得ることから,PDCにはT細胞のIL-10産生を惹起する特異的な分子機序が生来的に備わっていると示唆される.この点に関し,成熟したPDCは,ICOS-ligand (Inducible costimulatory ligand: ICOS-L)) を特異的に強発現し,Naive CD4+ T細胞をIL-10産生制御性T細胞に分化誘導することが判明している.PDCはICOS-L以外にも様々な因子を発現することが分かっているが,今回我々はPDCが産生する3つのサイトカイン,I型IFN, IL-6, TNFに着目し,ICOS-LによるIL-10産生T細胞誘導にこれらサイトカインがどのように関与するか検討した.方法としては,CpG-DNAまたはIL-3で刺激したPDC, あるいはICOS-Lを強制発現させたfibroblast L細胞 (ICOS-L Lcell) とNaive CD4+ T細胞を共培養し,1週間後のT細胞を解析した.実験結果から,PDCが産生する3つのサイトカインのうちI型IFNとIL-6は,ICOS-Lの持つIL-10産生T細胞誘導能を補助するように機能し,一方TNFは,自身のICOS-L発現を増強することによって間接的に作用すると考えられた.また,誘導された細胞は,FOX-P3を発現していないことも判明した.PDCは獲得免疫において,IL-10産生T細胞誘導に合理的なメカニズムを持ち,末梢トレランスに寄与していると考えられる.

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© 2015 関西医科大学医学会
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