関西医科大学雑誌
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進行性核上性麻痺におけるErbBファミリーとNRG-1の病理学的検討
村上 綾中村 正孝金子 鋭Lin Wen-LangDickson Dennis W.日下 博文
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2019 年 70 巻 p. 13-17

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抄録

ヒト上皮成長因子受容体は,ErbB1-4の4つのメンバーからなるファミリーを形成している.ニューレグリン-1 (NRG1)/ErbBシグナルは,脳の発達を調節し,シナプスの可塑性や神経細胞の生存に関わる.このシグナルの異常は,アルツハイマー病,パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患に関与している事が知られている.そこで,今回我々はNRG1およびErbBファミリーの発現を進行性核上性麻痺(PSP)において初めて検討した.C末端ErbB4の染色性は,対照患者の神経細胞の細胞質および核に存在していたが,PSP患者の神経細胞の核にはほとんど観察されなかった.一方でPSP患者の神経及びグリア細胞質内封入体である神経原線維変化,tuft-shaped astrocytes, coiled bodies, threadsにC末端ErbB4の染色性を認めた.この結果は,NRG1/ErbB4シグナル伝達の異常がPSPの病態に関与している可能性を示唆している.

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© 2019 関西医科大学医学会
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