抄録
Thiola[α-Mercaptopropionylglycine]およびBenzoylithola[α-(S-Benzoylmercapto)-propioaylglycine]について,ラツトに経口的に長期に投与した際の慢性毒性を検討した.
幼若雄SD系ラツト80g前後のもの45匹を3群に分け,Thiola 30 mg/kg投与群,Benzoylthiola 163.8mg/kg投与群および対照群とした.Benzoylthiolaは生体内および生体外において容易に加水分解し,ThiolaとBenzoicacidに変化する.Thiolaは3%水溶液,Benzoylthiolaは16.38%水溶液として,昭和40年6月28日より5週,14週,および28週間にわたつて,上記の量を1日1回体重測定後に経口的に投与した.各群15匹の中5匹ずつを各試験時に屠殺し, 解剖学的, 血液学的および組織学的に検査を行なつた.
薬物投与群のラツトについての所見を対照群のそれと比較すると,肝についての組織学的所見を除いて,体重増加およびいずれの試験成績についても薬物投与に基因すると思われる病的所見をほとんど見出し得なかつた. Ben-zoylthiola 163.8mg/kg投与群のすべての例,およびThiola 30mg/kg投与群のうち14および28週間投与した例から得られた肝の組織学的所見には, 軽度の病理学的変化がみられた.