関西医科大学雑誌
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関西医科大学CCU13年間の急性心筋梗塞の臨床像と治療効果の変遷
岩坂 壽二唐川 正洋
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1993 年 45 巻 3-4 号 p. 179-187

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抄録

1978年から約13年間に本学CCUに収容された発症後48時間以内の急性心筋梗塞711例と1980年から心.冠動脈カテーテル法を行った症例4588例の経験から虚血性心疾患の位置づけを明らかにするとともに,診断および治療法の変遷と効果を検討し,新設された心臓血管病センターの目指すべき針路を模索した.CCUへの収容症例数,心.冠動脈カテーテル法を行った症例数はいずれも増加の一途を辿り,1992年にはそれぞれ年間122例,734例となった.急性心筋梗塞の死亡率はCCU開設数年間は27%と高かったが最近では10%へと減少した.この要因として,血管拡張剤による減負荷療法,新たな強心剤の開発,大動脈バルーンパンピング(IABP)に代表される補助循環法,呼吸管理の進歩に加えて,最も貢献した治療法として経皮的冠動脈形成術(PTCA)の導入が挙げられる.今後,経皮的心肺補助装置(PCPS)や冠動脈内ステント術の導入,冠動脈内エコーによる心筋梗塞発症機転の解明からの治療手段の選択などにより一層の死亡率低下が期待できる.つぎに,性差を検討すると高齢女性の予後は男性に比較して不良であり,エストロゲン補充療法の試行も必要と考える.また,積極的な社会復帰を目指した早期リハビリテーションを前提とする現在行っている運動療法の充実も肝要である.そして,効率良い充実した院内救急体制作りと地域医療機関との連携の充実を計ることが重要である.

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