四国西部と中央部の中央構造線に沿っては, 中期中新世の貫入流紋岩を中心にスメクタイトを主体とする熱水変質帯が形成されている。四国東部では, 流紋岩の貫入は認められないが, 変質粘土の細脈が生成され, 断層周辺にスメクタイトを主体とする熱水変質作用が及んでいる。熱水変質に伴う岩盤劣化は, 断層破砕と解釈されていたため, これまでの地質調査で見逃されていた。熱水変質作用によって形成されたスメクタイトないしスメクタイトの混合層鉱物を含む粘土はせん断強度が小さく, 中央構造線沿いの切土のり面における地すべりの素因になっている。また, スメクタイトを含有する粘土は, 予想外の低角度のすべりを発生させること, 切土後に数年を経て遅れて変状が現れることがあり, 斜面安定の評価上重要である。