日本地すべり学会誌
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論文
降雨による砂質斜面土層の圧縮変動と崩壊発生に関する理論的考察
森脇 寛
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2009 年 46 巻 3 号 p. 133-143

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抄録
降雨による斜面崩壊ではその発生前に亀裂の発生・拡大などの斜面変動がしばしば見られる。この斜面変動の初期過程を地下水位の上昇による土層の圧縮変形によるものと仮定して, 砂質斜面を対象に理論的に検討した。降雨浸透に伴う地下水流の発達を表す方程式と斜面土層の釣り合いの組み合わせ, および応力のべき乗に比例する圧縮モデルにより, 斜面土層の圧縮応力, 圧縮変動量の時間変化を表す解析式を導いた。これらの式をもとに一定降雨強度下のある時間経過後の斜面各位置における圧縮応力, 圧縮変動量の分布を図示した。ついで, モデル計算により, 斜面土層の圧縮応力は地下水流の発達特性を反映して時間経過とともに斜面上部から定常化する領域が増加すること, ならびに圧縮変動量は時間経過とともに増加するが徐々にその増加量は減少することを明らかにするとともに, 斜面下端における圧縮力と限界受働土圧との釣り合いから崩壊時間やそれまでの圧縮変動量が推測できることを示した。最後に, この圧縮変動量曲線およびその速度特性をもとに圧縮変動過程から崩壊発生過程への移行点についても議論した。
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© 2009 公益社団法人 日本地すべり学会
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