2025 年 65 巻 3 号 p. 677-688
教員の研修観の転換が求められている(中央教育審議会,2022)。本研究では,小学校で理科を学習指導する教員の資質能力が,授業研究においてどのように発揮されるのかを見とる方法をKiper & Mischke(2004,2006,2009)に基づく授業プランニングマップを活用して実証することを目的とした。その結果,以下の諸点が明らかとなった。1)小学校で理科を学習指導する教員の資質能力と授業プランニングマップを関連付けることで,資質能力がどのように発揮されるのかを見とることができた。このことから,ドイツの授業理論に基づく授業プランニングマップは,教員の資質能力の状況を明示することができるといえる。2)教員が自分の学びを自分でデザインするためには,アンケート調査による自己評価だけでなく,授業プランニングマップを活用した授業研究の分析という教師教育者(研究者)による他者評価も併用し,そのズレを教員に開示することによって可能になることが示唆された。3)他の教員と協働した授業研究を実践したり,「規範的概念」が授業研究に影響したりする状況において,授業研究から資質能力を見とることができない事象が発生した。このことから,資質能力は,授業研究以外の要因とともに,統合的・連動的に捉える必要があることが示唆された。