地すべり
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岩手県南西部の夏油地すべり地の粘土鉱物について
多田 元彦大河原 正文
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1994 年 31 巻 2 号 p. 24-31

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抄録

夏油地すべり地は, 活動が休止しているが, 標高1050m前後のところに五つ, 標高900m前後のところに六つ, 標高800mのところに三つの地すべり地形がみられ, 大きく三段に地すべり地は分かれている。最下段の地すべり地形には頭部, 末端隆起部が残っていて, 新しい地すべりの様相を示している。夏油地すべり地の活動が再発するかどうか, その地域に分布している地すべり粘土を調査した。そこには, モンモリロナイト, 緑泥石, セリサイトの粘土鉱物が広く分布しており, 沸石鉱物は斜プチロル沸石, 輝沸石なども分布している。守随 (1987) によると, 緑泥石は緑泥石-スメクタイトの混合層を経てスメクタイトに変化すると言う。また, 斜プチロル沸石もスメクタイトに変化すると推定されている (1984)。これらのことからスメクタイト, モンモリロナイトが増加することはあれ, 減少することはないと考えられる。
モンモリロナイトは含水すると膨潤し, せん断強度が低下するので, 地すべりの素因となる。夏油地すべり地にはモンモリロナイトが広く分布していて, 地すべり活動のポテンシャルが高い地域と考えられるので, 地形改変が行われると地すべり活動の再発が危惧されるところである。

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© 社団法人日本地すべり学会
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