抄録
1997年5月11日に発生した澄川温泉地すべり・水蒸気爆発に関連して, 新澄川, 新赤川両温泉と付近に分布する酸性硫酸塩型温泉, 変質帯から採取した温泉水試料, 変質粘土間隙水試料の化学成分濃度の分析・解析を行った。本分析・解析により, 水蒸気爆発が高温火山ガスや深部熱水が上昇してきて発生したという「火山活動の一環」である可能性が低いことを解明できた。
今回の澄川地すべり, 水蒸気爆発は,(1) 大量の降雨, 融雪の後の地すべり発生,(2) 地すべり地塊による活発な温泉活動地帯の埋積, 温泉湧出経路の切断による温泉水圧上昇に起因する, 温泉貯留層からの水蒸気爆発の発生, という発生順序・発生機構であったと推定できる。この現象は, 1971年に発生した鹿児島手洗温泉における地すべり・水蒸気爆発の経過と類似している。