日本地すべり学会誌
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アテ形成履歴からみた薄別川地すべりの変動履歴と水文・地質構造
中村 友輔菊池 俊一北口 勇作藏田 昭美
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2004 年 41 巻 3 号 p. 236-244

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抄録

地すべり現象の把握と災害の予防のための調査手法として, 樹木年代学的手法と水文地質学的手法という二つの手法の統合を考え, 北海道薄別川地すべりに対し, 両手法の統合の有用性を明らかにするため調査を行った。まず樹木年代学的手法, アテ形成履歴解析により, 長期的な地すべり変動の把握と重点的な調査対象領域として捉えられる地すべりの活発領域の抽出を試みた。次に, 水文・地質構造調査を行い, 将来的な地塊動態の予測を試みた。その結果, アテ形成履歴解析により, 複数の地すべり土塊から構成されていた薄別川地すべりのある土塊ですべりが繰り返されていたことが判り, 薄別川地すべりを活発領域と非活発領域の二つに区分でき, 災害予防のための重点的調査対象領域をアテ形成履歴解析により抽出できることが明らかとなった。また地すべり地の水文・地質構造調査結果から, 強深層風化帯, 強度の有効応力低下域であり活動性が高いと想定した土塊では, 実際に地表伸縮計観測によってその妥当性が明らかになり, 現在の水文観測と地質構造解析から, 地すべり土塊の動態を想定することが可能であることが実証され, 活動頻度が未知の地すべり地で, 現象の把握と災害予防のために両手法を統合することは有用性が高いと考える。

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© 社団法人日本地すべり学会
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