抄録
地盤の比抵抗は, 主に間隙率, 飽和度および間隙水の比抵抗によって変化する。このため比抵抗モニタリングにより地盤の比抵抗変化を測定し, 間隙率と水質を一定と仮定して, 比抵抗変化から地下水の分布や移動を把握する研究が多く報告されている。しかし, 間隙水の比抵抗の温度依存性は広く知られていたが, これらの研究では比抵抗モニタリングにおける地温変化の影響は無視できる範囲の変化として考慮されてこなかった。本研究では, 兵庫県神戸層群地すべり地において季別に行った比抵抗法2次元探査による比抵抗モニタリングにおいて, 地表付近の見かけ比抵抗が年周変化を示すことを明らかにした。そして, この結果と地下水位, 降水量, 中性子水分検層プロファイルおよび地温などの現地観測資料との比較から, 本試験地における比抵抗変化の主要因が地温変化であることを示し, 長期的比抵抗モニタリングにおける地温変化の考慮の必要性を明らかにした。さらに, 比抵抗変化部の解析手法として差トモグラフィ解析法の有効性を示した。