日本地すべり学会誌
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日本の第四紀火山で生じた山体崩壊・岩屑なだれの特徴
発生状況・規模と運動形態・崩壊地形・流動堆積状況・発生原因について
井口 隆
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2006 年 42 巻 5 号 p. 409-420

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抄録

火山体では多様な斜面変動が多く発生している。中でも岩屑なだれを伴う山体崩壊は最も悲惨な災害を引き起こす。火山体に発生する山体崩壊・岩屑なだれの特徴を明らかにするため, 日本列島における発生状況について可能な限り多くの事例を収集し検討した。その結果, 日本列島の第四紀火山のうち67火山において128件の発生事例が確認できた。これは日本列島に分布する火山のうち約4割に相当する。火山体における大規模崩壊-岩屑なだれの発生頻度は最近500年間では見ると60年に1回程度である。大部分の山体崩壊の規模は0.2km3より大きい。岩屑なだれは横方向へも広く拡散する特徴を有するため, 被災範囲が極めて広い。火山体において発生する山体崩壊-岩屑なだれの規模は他の地質地域と比べると大きく, しかも流動性があり, 発生頻度が高いなど他の地域で起こる大規模崩壊より危険度が大きい。およそ3分の1の岩屑なだれ堆積物において流れ山が確認できた。また65件の岩屑なだれの崩壊源の位置を推定したところ, 山体崩壊は火山体の山頂付近など山体上部で発生する傾向が見られる。約3分の2の岩屑なだれの崩壊源は確認できなかったことから, 山体崩壊の跡地は容易に開析されるか埋積されて不明瞭となる。岩屑なだれの流動性は他の土砂移動現象と比べて高く, その等価摩擦係数は (H/L) は0.2から0.08と極めて小さい。山体崩壊・岩屑なだれは第四紀火山において必ずしも特異な現象ではなく, 火山体の開析過程の1つである。特に円錐形の山体を持つ活火山では, 山体崩壊-岩屑なだれを多く発生させてきた。多数の火山を有する我国では今後も山体崩壊・岩屑なだれが発生する危険性を考慮しておく必要がある。

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