抄録
要旨:本邦では,下肢潰瘍患者の実態は把握されておらず,どれほどの患者が存在するのか不明であるが,食生活の欧米化などにより糖尿病罹患患者が増加していることなどから実際の下肢潰瘍に悩む患者の総数は増加傾向にあることが予想される.また,糖尿病性や動脈性のみならず,静脈性やその他の下肢潰瘍の実態も不明のままである.このような下肢潰瘍の患者に対して,欧米では足病医を中心とする創傷センターが実働し,科を超えた集学的治療が施行されているが,本邦においては創傷センターがほとんどないに等しい.たった一つの下肢潰瘍が一つの科のみで治癒へ導くことが困難であるのにもかかわらず,集学的治療がなかなか進んでいない現状にまず目を向けなければならない.潰瘍に陥っている原因を突き止め,多科が協力して治癒へ導き,フットケアとフットウェアを含めた予防に務めることが肝要である.