抄録
近年,高齢化や生活習慣の変化により末梢動脈疾患(peripheral artery disease:PAD)は増加している.しかし跛行症状でPAD罹患の有無を評価することはむずかしく,早期発見,予防の重要性から考えるとスクリーニング検査の重要性は高い.今回,当院外来通院中の糖尿病患者388名を対象として,定期的に足関節/上腕血圧比(ankle brachial index:ABI)検査を行った.その結果ABI0.9未満で初めてPADを指摘された患者が16名(4.1%)みられた.循環器科紹介の結果,全例が血管狭窄を有しており,15名が治療された.この結果から無症候の糖尿病患者に対する定期的ABI検査がPADの発見・治療に貢献できる可能性が示唆された.また,PAD診断後の外来継続フォローが確実に行えている患者は,10名中1名であった.PADの治療中断の実態と定期的ABI検査がその予防の一助となる可能性が示唆された.